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第6話 怪しい教祖が出てきました!!

Author: 霧原いと
last update Last Updated: 2025-11-26 09:54:34

「何者だっ……!!」

 突然の派手な侵入者の登場に、聖バーベル教会の信者たちはどよめく。

「王国正規軍・第七師団大佐、カイル・レオンハルトだ。私の部下を返してもらおう!」

 カイル大佐は、単身でこの場に乗り込んできているようだった。けれど全く臆する様子はない。私は頼もしすぎる味方の登場に、思わず祭壇の上からブンブンと手を振る。

「私はここですっ! 来てくれたんですね、大佐っ!!」

「当たり前だ! すぐに戻って買い出しの続きだぞ、コハル!」

「はいっ!」

 ああ、やっぱり私の推しは最高に格好良い! 半裸だけど。いや、今回に限っては、爆風で上半身の服が吹き飛んだだけだから――多分。

「何をふざけたことを! これから聖女様は、我々とスクワットの儀をおこなうのだ!! 邪魔をするな!」

 私にとって全く身に覚えのない予定を口にしながら、信者数名が大佐に襲い掛かる! 宗教団体の信者とはいえ、見た限り、ここにいる全員がエリートマッスルだ。流石の大佐でも、百人の筋肉が相手では数に押されてしまうかもしれない。

「大佐、危な――」

「ふんっ!!」

 ……そんな私の心配は全く必要なかったようで、大佐が重い拳を振りぬいた衝撃波で、向かっていった信者たちは全員吹き飛んでいった。

 え、なに、今のは魔法?

「違う、鍛えられた筋肉の力だ!!」

「地の文に返事しないでくださぁい!」

「何を言っているんだ、コハル? というか、君、全部喋ってたぞ」

「なんですって……!?」

 私は興奮のあまり、思いが全部声になって漏れ出ていたらしい。いけないいけない、気を付けないと!

 そんな風に私が気を落ち着けている間にも、大佐はこともなげに信者たちをなぎ倒していく。

「とにかく、助かりそうで良かった」

 この調子なら数分もかからずに、カイル大佐は祭壇の所まで助けに来てくれそうだ。

 しかし、ほっとしたのも束の間、建物内に突然エコーがかった声が響き渡った。

「おやおや、随分と好き勝手に暴れてくれたようだねぇ」

「だ、誰っ!?」

 声の主は、私が祀られている祭壇の傍らに現れた。先程までは居なかった筈なのに、いつやって来たのか、全く分からなかった。

「「「教祖様!!!」」」

「教祖……??」

「そうです。お初にお目にかかります、聖女様。僕はこの聖バーベル教会の教祖、ビルド・マッソ」

 聖バーベル教会の教祖だというビルドは、他の信者たちとは全く異なる装いをしていた。全身をマントで覆い露出は控えめだが、何となく細身で小柄に見える。目元に仮面をつけて顔まで隠し、口許だけがのぞいていた。

「この宗教の教祖……、つまり諸悪の根源ですね?」

「ははは、これは手厳しい!」

 私の辛辣な言葉に対しても、さして気にした様子はない。今度こそ、少し不味い予感がした。この教祖、明らかに今まで出てきた人たちとオーラが違う。強キャラの予感がする……。

「あなた、目的は一体何なの!?」

「我々の目的は、筋肉で世界を救うことですよ、聖女様!」

「その割には、あなた自身は筋トレしないんですね」

「ふふ。聖女様からのありがたいお言葉、肝に銘じます」

「くっ、全然、私を聖女として見ている、って感じがしないけど」

 私の言葉に、教祖はにたりと笑みを浮かべた。そして数歩こちらへと歩み寄ると、エコーのかかっていない――私にだけ聞こえる声でこう囁いたのだ。

「ああ、そうだ。貴様は……”転生者”だろう?」

「……ッ!!」

 脳が一瞬、理解を拒んだ。ぞくりと背筋が寒くなる。やはり、この教祖は明らかに異質だ。まさか私の正体を知っているの? 下手をすれば、この世界がゲームであることまで?

 頭の中をぐるぐると疑問が駆け巡る。オタク的頭脳は完全に固まってしまっていて、何と答えれば良いのか分からない。

(どうしよう、どうすれば――)

 狼狽える私を待ってくれる筈もなく、教祖の手がゆっくりと此方へと伸びてくる。そして――

「ふんっ!!」

 その手は私に触れることすらなく、教祖本人が空の彼方へ吹き飛んでいった。

 祭壇の傍まで辿り着いたカイル大佐が、一振りでやってくれました。

「うわぁ……」

 あんな重要キャラっぽい振る舞いだったのに、こんな雑に退場するんだ。というか、弱かった。凄く魔法とかも駆使して応戦してきそうな雰囲気だったのに。いやカイル大佐が強すぎるのかな……。

「コハル、怪我は無いか?」

「あ、はい、とっても無事です!」

 私はカイル大佐の手を借りて、祭壇から降りてくる。聖バーベル教会の施設だったのであろう建物内は、敗北して倒れ伏した信者たちと、スクワット儀式の準備品がごちゃついていて、カオスな状態になっている。

「そうか、よし、では――帰るか」

「はっ、はい!!」

 何となく、教祖以外はそんなに悪い人ではなかった気がする。だから少しだけ申し訳ない気持ちもあるが、私は私の居たい場所へと帰ることにした。

 大佐の立派な広背筋を眺めつつ、帰路へ着く。私は不思議と、自然に笑みが零れてきてしまうのだった。

 ――そして、安堵から私はすっかり忘れていた。

 さらわれる直前に、大佐と"異世界転生"の話をしていたということを。

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  • 転生したら推しの軍人様が「筋肉信者」になっていたんですが!? ~そして私は筋肉聖女~   第45話 世界崩壊の音

    「ごめんなさい……っ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」 私は頭を抱えたまま、ひたすら謝っていた。  誰に? 大佐に? みんなに? きっと、この世界の全てに。  ――みしみし、みしみしみしっ。  空に大きな大きな亀裂が走って、どんどん広がっていく。  ひび割れた隙間から、漆黒の闇が差し込んで来る。 私の視界が真っ暗に染まっていく。私の世界から音が消えていく。  何も見えない。何も聞こえない。  周りがどんな様子なのかも、何も分からない。 ただただ、胸に広がるのは悲しい虚しい気持ちだけ。   ――みし、みしみしみし……パリンッ!!   亀裂はついに大空全てを覆い尽くし、そして最後に、空がガラスのように砕け散った。(ああ、大佐に、みんなに、せめてきちんと、謝りたかった……) 私は何も分からないまま、その場で意識を失った。◇ ◇ ◇ 突然、空に亀裂が入ったかと思うと砕け散り、あたりは不気味な暗闇に包まれた。  コハルも暗闇に呑まれて、姿を消してしまった。  周りの地面や建物の壁にもところどころにヒビが入り、闇が吹き出してきているのが見える。「大変だーっ……!?」 「世界が終わる!!」 「筋肉聖女さまは、何処に行ってしまったんだ!?」 動揺しながら騒ぎ立てる兵士たちを、私は一喝した。「落ち着け! 筋肉の強さは心の強さ!! 名誉あるダンベリア兵がこの程度で狼狽えてどうする! その筋肉に誇りを持て!」「「「は、はいっ!!」」」「不安であれば、指示があるまで筋トレをして待機だ! 心も落ち着き、筋肉も鍛えられ、一石二鳥だろう!」「さ、流石カイル大佐!」 「よーし、ダンベリア国王である私が筋トレの指揮を取っちゃうよ! グルメシアの皆も一緒に、どう?」 「この雰囲気で筋トレするのか?」 「こいつら、正気か……?」 「いや、でも、変に取り乱すよりは良いのかも……」 各国の兵士や随行団をひとまず落ち着かせると、私は取り押さえているビルド・マッソへ向き直る。「おい、貴様! これは一体、どういうことだ!?」 ビルドは不敵な笑みを浮かべながら、ふてぶてしい態度を崩さない。「はっ、全部さっき話した通りだよ! この世界は作り物なの! そして創造者であるあの女がこの世界に絶望したことで、崩壊を始めた。もう全員終わりだよ! 俺も、お

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